『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』


わたしたちの祖先はなぜ、自らの身体を過酷な環境においてまでも危険な拡散を試みたのだろうか

KAC TRIAL PROJECT / Co-Program 2017 カテゴリーB「共同開催」(展覧会事業)採択企画

 京都芸術センターは今年度より、アーティストとの連携を強化して創作・発表の場を広げるべくKAC TRIAL PROJECT / Co-programを始動。昨年12月に、カテゴリーA「共同制作」(公演事業)、カテゴリーB「共同開催」(展覧会事業)、カテゴリーC「共同実験」(リサーチ、レクチャー、ワークショップ等)、カテゴリーD「KAC セレクション」(舞台芸術の分野での発表に限定した支援)の4つの枠組みの中でプランを募集しました。

 カテゴリーB(展覧会事業)では、京都を拠点に活動する黒宮菜菜のプラン『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』を選定し、ギャラリー北・南そして和室「明倫」と場所を拡張しながら、若手作家3名によるグループ展を行います。

 人間はなぜ創作するのか。本展覧会は、黒宮の素朴でありかつ根源的な問いを基に形作られています。約10万年前にアフリカ大陸を出発した人類は、長い時をかけて4万8000年前頃までに現在のアジア地域まで拡散しました。人類が遊動してゆく中で生まれた祭祀や儀式といった活動が、現代に生きる私たちの創造と繋がっているとも考えられます。生存とは異なる次元で、表現することへの純粋な欲求を、私たち人類はもともと持ち得ていたのではないでしょうか。

 今回出展する3名の作家は、人間の「身体」についてそれぞれ異なるアプローチで活動しています。黒宮は人間の輪郭を描きながらも、滲みや暈かしを用いることで、むしろ身体そのものの存在を曖昧にしてゆく絵画表現を展開しています。シンメトリーの画面が宗教的な要素を連想させると同時に、明滅する液晶画面上のイメージのようでもあり、観る者の感覚を強かに揺さぶります。二藤は、自身が直接世界に触れることを軸とした、新たな彫刻表現の可能性を追及しています。手触りや質量といった人や物質が存在することへの問いが、一見ユーモラスに、かつ切実に私たちの目前に投げかけられます。自らの身体
を確固たる表現媒体とする若木は、世界各地のマラソンを走破することを実践の一つとしています。その記録映像には、作家なのかアスリートなのかといった議論が最初から吹き飛ぶような、祝祭性を帯びたしなやかな魅力があります。

 彼らの創作に共通するのは、目の前の現実を各々の方法で咀嚼し、確かめようとする実直な姿勢です。そしてそれは、かつて遊動を始めた過去の人類にとっても、同じことだったのかもしれません。この瞬間が、10万年前から続いている今日だということを改めて実感する機会に、どうぞご期待ください。

会期:2017年5月25日 (木) – 2017年7月2日 (日)
10:00-20:00
会場:京都芸術センター ギャラリー北・南、和室「明倫」

[企画概要]
 わたしたちの祖先はなぜ、自らの身体を過酷な環境においてまでも危険な拡散を試みたのだろうか。
 約10万年前にアフリカを出発した人類は4万8000年前頃からアジアにまで広がった。最先端の人類進化学研究を担う海部陽介は、人類のアジア拡散ルートについて、ヒマラヤ山脈を挟んで南北に別れた人類が、まるでアジア全域に大回廊を築くかのように西から東へと横断し、1万年後東アジアで再会したという仮説を提唱している。さらに、東アジアで再び出会った人類は、今度は草舟を作って海に乗り出し、人力渡航で日本まで辿り着いたとも考えているのだ。
 また、人類は長い拡散と遊動生活のなかで、身体を飾る装飾具、死者を弔う埋葬や火葬といった儀式、洞窟の壁の描写など、多くの創造活動の痕跡を残している。氷河期の過酷な環境における純粋な生存への欲望とは別の次元で、なにか身体を媒介とした表現活動への根源的な渇望があったのではないだろうか。そして、その身体表現への渇望は、地球上のあらゆる場所へと拡散せざるを得なかった人類の遊動することへの欲望と通低していると思われるのだ。
 本展覧会では黒宮菜菜、二藤建人、若木くるみが原初的な欲望である「遊動」をテーマに作品を発表する。すべての人々にとって、人類の「のっぴきならない」欲望の根幹を探る旅となることを期待したい。


[出展作家]
黒宮菜菜、二藤建人、若木くるみ

[関連企画]
アーティスト・トーク
日時: 5月25日(木)18:30-20:00
会場:ギャラリー北・南、和室「明倫」を巡回 ※ギャラリー南に集合
進行:平芳幸浩(京都工芸繊維大学美術工芸資料館准教授)
※入場無料・事前申込不要

レセプション・パーティ
日時: 5月25日(木)20:00-21:30
会場:フリースペース
※入場無料・事前申込不要

レクチャー 「のっぴきならない探検家に聞きたい!」
日時:6月17日(土)19:30-21:00 ※開始時間が変更となりました
会場:京都芸術センター 内
登壇:関野吉晴(探検家・医師・武蔵野美術大学教授)
料金:無料(要事前申込)
※京都芸術センターウェブサイトより申込

詳細はウェブサイトをご覧ください
http://www.kac.or.jp/events/21126/


会場付加情報
住所
京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2
アクセス
JR「京都駅」から地下鉄烏丸線に乗り換え「四条駅」下車、22・24番出口より徒歩5分/ 阪急京都線「烏丸駅」22・24番出口より徒歩5分
電話番号
075-213-1000
日程
時間
10:00-20:00
休日
12月28日から1月4日
料金
特記事項
駐車場はありません。