猛烈な暑さの京都を離れ(事務局の皆さん、留守にさせてくれてありがとう!)、
ルールトリエンナーレへやって来た。
ルールトリエンナーレとは、3年を1タームとして毎年開催しているドイツはルール地方で開催されている芸術祭だ。
ルール地方といえば、地理の授業で重工業地帯として「エッセン」「ドルトムント」「デュイスブルク」など呪文のように暗記させられた地名でご記憶の方々も多いだろう。このルールトリエンナーレも、そんな工業地帯の名残を残した、印象的な場所、—工場跡地や石炭採掘場跡を会場として活用している。
2012年〜2014年の芸術監督は、先月YCAMで
「Stifters Dinge」を発表したハイナー・ゲッベルスだ。そんな彼のキュレーションした今年のプログラムは話題作で目白押しだ。それらの作品群の中でも、池田亮司の作品はクオリティーだけでなくスケールの面でも強烈なインパクトを与えていた。
今回池田は、
test pattern [100m version]と題して、巨大な工場跡地で、test patternの100メートルバージョンのインスタレーションを発表した。テクスト、音、写真、映像といったあらゆるデータを、バーコードあるいは0/1のバイナリパターンに変換するというオーディオ・ビジュアル作品test patternは、live setバージョンなどで体験した観客も多いはずだ。
今回の100メートルバージョンは、その名の通り100メートルにも渡る巨大なスクリーンを工場跡地の床面に設え、そこに計10台のプロジェクターで天井から投影する形のインスタレーションだ。
「途方も無い」という形容がぴったりの体験だった。無限を意識させるデータの集積が視覚と聴覚を刺激し、どこまでも続くような、まさに物理的に「途方も無い」スケールの展示は、「一目で」見渡すことができないのだ。
映像の移り変わりを追いかけようと駆け出す子どもとは対照的に、大人はそのスケールの大きさに身を委ねるしかなく、体をそこに横たえて瞑想状態に入るものも少なくなかった。
(インスタレーションの模様を撮影した動画がこちら)
http://www.dezain.net/2013/26205
もう一つ印象深い作品について記しておく。ボリス・シャルマッツのダンス作品
「Levée des conflits」が、石炭採掘場跡を利用した800人収容のアリーナで発表する予定だったが、初日に大雨が降ったため(何とか実施)、翌日は屋内に会場を変更することになり、筆者はその屋内での公演を観劇した。(採掘場跡まで何とかたどり着いたが、そこで会場の変更が告げられ、フェスティバルが準備したバスで皆別の場所へ連れて行かれたのだ。)2011年にブリュッセルで既に観劇した作品だったが、今回の上演では出来るだけ採掘場跡のアリーナを再現するように、囲み舞台で2階3階のバルコニーからも囲んで鑑賞出来るような場所を選んでいたことで、やはり随分と印象が違うものだった。元の採掘場跡で観ることが出来なかったのが悔やまれる。
さて次回の投稿では、遡って今年3月に観劇した池田亮司新作「superposition」のロンドンのバービカンで行われた公演の模様をレポートする予定である。