プロフィール

小崎 哲哉(おざき・てつや)
1955年、東京生まれ。
ウェブマガジン『REALTOKYO』及び『REALKYOTO』発行人兼編集長。
写真集『百年の愚行』などを企画編集し、アジア太平洋地域をカバーする現代アート雑誌『ART iT』を創刊した。
京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員、同大大学院講師。同志社大学講師。
あいちトリエンナーレ2013の舞台芸術統括プロデューサーも務める。

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あいちトリエンナーレ前半を振り返る

2013年09月26日

あいちトリエンナーレ、全79日間という会期も半ばを過ぎた。パフォーミングアーツ部門のこれまでの成果を自己採点すると100点満点。「自画自賛」「手前味噌」「思い込み」と言われればそれまでだが、率直に言って傑作ぞろいだと思う。

8/10の開幕を飾ったままごと『日本の大人』については前回のブログに、8/23-25の藤本隆行+白井剛『NODE/砂漠の老人』は『ケトル』No.14に書いた(あいちの完成版では、さらにベケット度が高まっていた)。8/30-9/1のやなぎみわ『ゼロ・アワー〜東京ローズ最後のテープ』については近々REALTOKYOに書くが、「声とイマージュ」を主題とした名作。日本だけでなく、海外、特に日系人を含む米国の人たちに見てもらいたい。

9/6-7の梅田宏明『4. temporal pattern』は、インドと台湾の古典舞踊、それにカンボジアのモンキーダンスの踊り手を同じ舞台で踊らせるという難しくも果敢な試み。ところが、ノイジーな電子音楽と映像がニュートラルな距離感をもたらし、それぞれの差異を際立たせながら調和をも生むという奇跡的な結果となった。もうひとつの『Holistic Strata』は梅田自身のソロ。センシングディバイスを用いて音楽と映像を操作するインスタレーション的な作品だ。本人曰く「自分もオブジェクト」だそうだが、舞台中央からほとんど移動せず、光と闇のさなかでもがくように踊る姿が、密室の中のベケット的人物に見えた。

『フェスティバルFUKUSHIMA!』の会場「オアシス21」



9/7-8は大友良英のディレクションによる『フェスティバルFUKUSHIMA! in AICHI!』。中崎透、アサノコウタらによる大風呂敷や櫓が半屋外会場に設置され、あまちゃんスペシャルビッグバンドや遠藤ミチロウ、勝井祐二、中村達也らが演奏を行った。珍しいキノコ舞踊団が振付を担当した盆踊りもあって、トリエンナーレにふさわしい祝祭的空間となったが、これがプロジェクトFUKUSHIMA!による企画であり、盆踊りは死者を弔う行事であることは忘れたくない。白状すれば、踊りすぎで翌日腰が痛かったけど(笑)。

リハーサル風景。後方右手に奈良さんが絵を描いた「No Nukes」ののぼり旗が見える



この企画でうれしかったのは、プロジェクトFUKUSHIMA!を支援するための「のぼり旗」(大1万円、小5千円)キャンペーンに、たった5日間で90本もの応募があったこと。あの奈良美智さんも大6本分協賛してくれ、しかも絵まで描いてくれた。奈良さんが青森出身ということもあるだろうが、ビジュアルアートと舞台芸術が図らずも自然に架橋された形である。のぼり旗には協賛してくれた個人や団体の名を、大友さんが自ら筆を執って書いてくれる。REALKYOTOとREALTOKYOも、大2本の協賛を行った。

大友さんに名前を書いてもらったREALKYOTOののぼり旗



9/14-16はイリ・キリアン『EAST SHADOW』の世界初演。ぎゅっと緊縮された感のある構成から、津波の犠牲者への作者の思いが伝わってきた。向井山朋子のライブ演奏に乗せた、ときにユーモラス、ときにシリアスなダンスと、高精細にして緊迫感あふれる映像が舞台上に真横に並ぶ。タイトルにある「影」は重要なベケット的テーマのひとつ。照明・映像・舞台美術が相俟って創り出す(あるいは消し去る)「影」の存在感が素晴らしく、60歳を超えた2人のダンサーが手を携えて踊る姿に、思わず涙が出そうになった。

Jiri Kylian『East Shadow』
(撮影:羽鳥直志。主製作:あいちトリエンナーレ2013+キリアンプロダクションズ)



キリアン・チームとの記念撮影(愛知芸術文化センター小ホールの楽屋にて)



9/21-22のほうほう堂『ほうほう堂@おつかい』は、名古屋市内の綿密なリサーチに基づいたサイトスペシフィックなダンス。長者町界隈を中心とした街なかを移動しながら踊るので付いていくのは難しいが、USTREAM中継の合間に地元の店や(抹茶や和菓子など)地場の名物の映像が挿入され、運動量に引けを取らない情報量にも圧倒された。「身長155cmのダンスデュオ」にはもちろん、周到な準備を行ったスタッフにも頭が下がる。

ポストパフォーマンストーク。いちばん左はプロデューサーの藤井さん。身長は近いけれど、ほうほう堂のメンバーではありません



9/22-23のアルチュール・ノジシエル『L’IMAGE』は、ベケットの同名テキストをもとに、音楽+朗読+ダンスで構成した意欲作。芝生が敷かれた舞台上に突っ伏し、急に飛び上がって回転し、痙攣的な動きを見せるダミアン・ジャレのダンスが素晴らしい。途中、ジャレの動きに連動して舞台が揺れ始めてびっくりしたが(揺れる大地!)、実は東日本大震災の際にジャレは日本にいて、そのときの体験が演出に活かされたとのこと。原文と和訳(長島確氏による新訳)の字幕が各2回スクリーンに投影されるが、途中に一切句読点がないテキストの最後は「これでできた おれ作った イメージを。」。観客は朗読者の声と字幕から、それぞれの「イメージ」を作り出すことになる。やなぎ作品と同じく、この作品においても主題は「声とイマージュ」だ。

今週末9/28(土)には、清水靖晃+カール・ストーンによる即興を基本としたライブ『Just Breathing』が上演される。ベケットには『Breath』(呼吸)という戯曲があり、それにもインスパイアされたものだ。サキソフォンとコンピューターによってどのような「イマージュ/イメージ」が生み出されるか。皆さん、ぜひ観に(聴きに)来て下さい。