プロフィール

福永 信(ふくなが・しん)
1972年生まれ。
著書に、『アクロバット前夜』(2001/新装版『アクロバット前夜90°』2009)、『あっぷあっぷ』(2004/共著)『コップとコッペパンとペン』(2007)、『星座から見た地球』(2010)、『一一一一一』(2011)、『こんにちは美術』(2012/編著)、『三姉妹とその友達』(2013)、『星座と文学』(2014)、『小説の家』(2016/編著)。

最新のエントリー

アーカイブ

おもフェスの思い出

2015年11月02日
京都・五条にあるHAPSで、金氏徹平達によって、おもフェスという名前で、こないだの31日と、1日の2日間、日替わりプログラム&高密度時間割のイベントが開催された。ハップスといえば夜ずっと、大和大路通に向けてえんえん映像作品を上映することでわたしに知られているが(それくらいしかこの場所の知識がなかったが、ウェブサイトを見たら、ものすごくいろんなことをやっているのでびっくりした)、今回、このイベントに2日間、行ってみて、ここが、フェスの会場として最適であるということがわたしに知られた。登場人物達は、1日目が、山崎伸吾、松見拓也、南大輔、MADEGG、梅田哲也、トーチカ、みあん。わたしが行ったのはその日の終わりのころだったが、入口ではコーヒーや煮卵&シカ肉燻製、シルクのライブプリント古着販売、可愛らしい小物物販などのブースも出ていて小さな場所とは思えぬにぎやかなお祭りらしさが印象的だった。

トーチカの出し物は庭に映像を投影したアニメーション作品で、日が暮れかけて、庭に面した畳の部屋、お客さんもくつろいでいるそんな雰囲気のなか、合図もなしに、いつの間にか、始まってる、その感じがよかった。青葉市子さんの歌に合わせた試作品を最後に上映する、うれしいオマケ付だった。そのあと、その畳敷きの部屋で、チョコンと腰を下ろして、みあん(青葉市子&青柳いづみ)が歌いだすのだが、その声が、青葉さんが高校生なら青柳さんはその同じ女の子の中学生のときの声、そんなふうに、きこえた、すてきなズレとかさなりだった。

2日目の登場人物達は、遠藤水城、金氏徹平、山崎伸吾、松本清和、もぐらが一周するまで、カワイオカムラ、荒木優光、塚原悠也、オオルタイチ。この日わたしが行ったとき、金氏徹平が、入口すぐのすごく狭い場所で、古着に自分の作品をシルクでプリントして売っていた。

 
「最近ものすごい勢いでふとってきて、着れなくなった服を売っているのである」とはご本人の弁。昨日も売っていたが、今日は刷る係がお休みなのでご本人が刷っているのである。昨日と同じく、この入口スペースはいろんな小さなお店が並んでいる場所なのであるが、階上からはもぐらが一周するまでのナイスなライブがもれきこえてくる、そんな場所でもある。2階に上がって演奏をきいていると、階下から魚の生臭いにおいがただよってくる、そんな場所でもあるのである。ズレながらも、どこかで何か、同時進行しているような場所がこのおもフェスであるようだ。

カワイオカムラのライブは、昨日みあんが演奏した畳の部屋、縁側ステージだ。ウィッグとサングラスの「正装」で二人が登場するのは、日本ではじつに久々だ。

 
ご本人によるトークのあと、これも久々に見ることになる「ヘコヒョン7」短縮版の上映、しかし、その後、2人は客席側に移動してしまう。すると背後の庭から、長身の男達、長髪のウィッグをつけた二人組が、「どうもカワイオカムラです」とマイク片手に語り出したのである。この新カワイオカムラ(?)は、20代の若者にしか見えず、見事なほどに素人さんで、控えめなのだが妙に堂々としていた。カワイオカムラのニセモノなのであるが、上映したばかりの「ヘコヒョン7」についてレクチャーするのがこの長身なニセモノの若者二人組なのである。「この作品のテーマはなんですか」「それはですね、何かと言いますと」みたいな、露骨にテレビ的なやりとりを展開するので見ていてわたしは微笑した者である。「ヘコヒョン7」にかぎらずカワイオカムラの作品には、テレビという世界がいつでも顔を出すのだから、このウィッグをつけた長身な若者二人による不思議な「漫才」は、カワイオカムラの作品をリアルにトレースしていたのかもしれない。来年、京都で大きな規模の個展が開催されるというアナウンスも、最後になされた。下の写真は筆者が偶然とらえたイベントの準備をする新カワイオカムラと、イベント終了後に本物のカワイオカムラ(背中)と語る新カワイオカムラである。

 
おもフェス、全部は見れなかったけど、フェスとはそういうものだろう。見られなかった分は、来年にもあると期待して、待っていることにしたい。

オマケ写真。1日目、2階でみあんのリハーサルをする青葉さん。美しい音色だった!